或る塾講師の読書録

簡単に読める小説を中心に、紹介できれば良いなと思っています。

【10分読書】『蜜柑』(著:芥川龍之介)【青空文庫】

『蜜柑』はこんな人におすすめ

・気軽に小説を楽しみたい人(10分程度で読める。青空文庫掲載作品)

・心が温かくなる小説が好きな人

・日々、退屈で代わり映えしないと思っている人

 

 

 どうも。そろそろ炬燵にみかんの季節ですね。ジュクリブです。

 

 この記事で紹介するのは、芥川龍之介著『蜜柑』です。芥川龍之介の作品は、短編で文体も読みやすいものが多いですが、『蜜柑』もその例に漏れません。

 『蜜柑』を読んでの簡単な感想は、色彩豊かな小説で、読後、心にじんわり温もりが広がるような素敵な作品だなと思いました。個人的には、読んだ小説の中でも、結構好きな方ですね。

 それでは、以下ネタバレを含みつつの感想です。『蜜柑』は10分程度で読め、青空文庫掲載作品ですので、是非一度読んでみてください。

 

 

・登場人物

 日々の生活が退屈だと感じている主人公の私と、いかにも田舎者で服は汚いし、顔も田舎臭い十三、四くらいの女子です。

 

・心理描写と情景描写

 この作品は、心理描写と情景描写が絶妙だと思います。

 ”私の頭の中には云いようのない疲労と倦怠とが、まるで雪曇りの空のようなどんよりした影を落としていた。”

 引用文からもわかるように、主人公は基本的には憂鬱で退屈な気持ちでいます。そして、それを象徴するかのように、モノトーンな色であったり、暗めの色の描写が多くあります。

 ストーリー展開としては、主人公一人しか乗っていない電車に、女の子が駆け込み乗車をしてくる。いくつかのトンネルを抜けた後、とある寒村を電車が通る。外を見ると、背の低い男の子3人が、電車に向かって何かを叫んでいる。これを見て、主人公はこの女の子がこれから奉公に出ることを悟る。そして、女の子は電車の窓を開け、その女の子の弟と思われる男の子たちに蜜柑を投げる。そして、その蜜柑は、”忽ち心を躍らすばかりの暖な日の色に染まっている蜜柑”なのである。

 暗い色彩ばかりの世界に、突如として色鮮やかな蜜柑の色が現れることで、この蜜柑がすごい印象深いものとなっています。

 そして、主人公は最初、この女の子を、小汚い田舎者とネガティブな印象を持っていますが、弟たちに蜜柑を投げるという一瞬を目の当たりにして、憂鬱とした気持ちを忘れ、朗らかな気持ちになるのです。

 

・蜜柑で何を連想するか?

 皆さんは、蜜柑と言えば何を思い浮かべますか。私はこたつです。なんとなくですが、年末には家族全員でこたつに入り、みかんを食べながら紅白歌合戦を見るみたいなイメージがあります。私自身そのような経験はないですが、蜜柑は家族団欒のイメージが強いです。

 この作品に照らし合わせると、女の子は弟たちと離れ離れになってしまいますが、女の子の蜜柑は、女の子とその弟たちがずっと家族であることを象徴しているように思えます。

 

・まとめ

 この作品は、大半がどんよりとした暗い描写ですが、最後の一瞬に、明るい暖かな描写があることで、それを非常に強く印象付けています。そして、その一瞬の明るさに、私は家族の温もりを感じました。

 

 それでは、このへんで。